Fediverse and Internet

マストドン公式iOSアプリのリリースについてディグニが思ったこと

先日のマストドン公式iOSアプリの今夏リリースの突然の一報、びっくりしましたね。まさに寝耳に水という感じで、急ぎSujiYanさんのトゥートやmastodon公式ブログを読んだのを思い出します。しかし、海外fediへの情報収集を主に活動している私の視点からこの件について考えると、自然な動きだなぁとは思ってるんですね。リリースの一報が突然であっただけで。それをまずは「例のあの人」がfediに来るのかという騒動に端を発してどういう課題が海外fediに浮上したのか、そしてそれに対して分散SNS公式および開発者や管理者、そしてユーザーはどう取り組んだのか、という観点から考えてみましょう。

「例のあの人」がfediに来るのかという騒動の辺りからマストドンを中心にfediの人口は鰻登りに上がっていきました。最盛期(2021年1月23日)までに騒動前(2021年1月9日)から分散SNS全体のアクティブユーザーだけでも119542アカウント増えて、マストドンだけでも108472アカウント増えてましたね(数字の出典は「the federation - a statistics hub」のサイトより https://the-federation.info/ )。これは「例のあの人」のTwitterのアカウントが凍結された事によって、アメリカ保守層の影響力ある人物がTwitterで「ParlerやGabに移動しよう」とツイッターの「例のあの人」の支持者たちに呼びかけたのが発端ですね。ところがParlerはAWSから強制的にそのデータセンターの契約を打ち切られた事が大きく影響し、Parlerは事実上のサービス終了を余儀なくされました。これによりParler難民(約800万アカウント。アクティブユーザー数は分からない)を含む支持者たちの間で他の代替サービスとしてGab・Telegram・fedi等の選択肢が浮上し、また一連の騒動によりTwitterの一般ユーザーもfediに興味を持ち、結果的に多くの人がfediに流れ込んでくるようになりました。

この騒動によってParler難民のようなunwelcomeな人達も一部の海外fediの人たちからすればいたでしょうが(どちらかというとそういった人たちが海外fediでは多数派ですが)、いずれにしても「この機会に脱中央集権・脱プラットフォームした新規fediユーザーをそれぞれのユーザーに適した分散SNSやインスタンスに迎え入れるにはどうすればよいか」という課題が分散SNS公式および開発者や影響力ある人物の間で浮上してて、よく議論されていました。そして、この課題に対して分散SNS公式および開発者・管理者、そしてユーザーを中心にこの1月初旬から一ヶ月の間、様々な動きや模索がありました(全ての動きをとらえることは私一人では到底不可能なため、小出しではありますが例を以下に記します)。

1.分散SNS公式および開発者
Pleromaでは、公式サイトをグラフィカルで分かりやすいサイトに刷新して、新たに初心者向けFAQのブログ記事がつくられました。またAPIの仕様書も不完全な内容ですが公開され、仕様書について質問や疑問があれば内容を適宜変更するとアナウンスがあり、情報公開も進みました。PixelFedは最近PixelFedインスタンスを探すサイト( https://beta.joinpixelfed.org/ )をbetaバージョンで公開して「おすすめインスタンスの追加作業してますよ」など公式アカウントから積極的に発信したり(元々PixelFed公式アカウントの開発状況等の情報を発信する傾向は強いのですが)、またActivityPubでPixelFedユーザーがPixelFed開発者陣と交流できるフォーラムを開発しています。これについては後にオープンソース化される予定です。

2.分散SNSの管理者
分散SNSサーバー関係者からも、例えばPleromaサーバー管理者でPleromaFEの一つ、Soapboxの開発者alex氏はPleroma向けのホスティングサービス「Tribes」をローンチしました。こうした大々的な事でなくても、普段は静かであまり意見を発しない分散SNSサーバー管理者が盛んに意見を発したり、#fediblockのタグを利用して「コミュニティによるモデレーション」をもって既存のユーザーとともに一連の騒動で荒れていた海外fediをより良い環境にして、新規fediユーザーをそれぞれのユーザーに適した分散SNSやインスタンスに迎え入れるためのfediの環境醸成がされていました(ちなみに#fediblockについては賛否両論あるのですが)。また各サーバー管理者が新規fediユーザーに向けて自分のサーバーを紹介する投稿をしていました。

3.分散SNSのユーザー
ユーザー単位では、新規fediユーザーを対象としたり新しくマストドン等の分散SNSを利用する人への、いわゆる初心者ガイドのような記事が相次いで発行されました。またとある個人が、非公式かつサーバーレコメンデーションのチョイスについて批判があったものの、独自にfediへの入口となるサイト( https://jointhefedi.com/ )が作られました。また#fediblockを利用して管理者やユーザー間でブロックすべきサーバーを上げるなどをしていましたね。また新規fediユーザーが自己紹介ハッシュタグ #introduction(s) で投稿した内容を既存のユーザーが通常時よりもよくブーストして、私のTLに同じ自己紹介文が2,3度出るほど、まるで回覧板を回すかのようにブーストされていました。

(いずれにしても海外の分散SNS開発者・管理者・ユーザー全員の向かっている方向は同じで、冒頭に書いた課題に取り組んでいた、という形でしたーーと言いたいところですが、実際のところは各分散SNS(特にMastodonとPleroma)のサーバー管理者やユーザーがそれぞれの思想・信条に基づいてバラバラに主張・行動しており、お世辞にも全体がまとまって冒頭の課題に取り組んでたとはいえません。日本人よりも海外の人は発言はストレートですし、日本のマストドンと違って平気でレスバトルしたり誹謗中傷をするのが日常です。特に本件は現実世界の政治絡みの話であり、普段の2,3倍ぐらいは発言や議論が相次いでいたように今では思います。とはいえ、個人の政治的な思想・信条は置いといて、分散SNS公式および開発者や一部の管理者やユーザーの間では冒頭の課題がシェアされていたように思います。特に分散SNS公式および開発者や影響力ある人物たちがこの課題を重く受け止め動いていたため、トップダウンで管理者やユーザーたちにfediが向かうべき方向性(つまり課題に取り組むように)を示していたように思います。もちろんボトムアップからの、つまり管理者やユーザーからのこの課題への自発的な取り組みもありましたよ。)

・・さて、こういった背景があって、マストドン公式でも何かしようと考えるのは自然な流れですよね。しかしマストドンでは、その公式サイトjoinmastodon.orgはPleroma公式サイトがニューデザインになる前からグラフィカルでわかりやすいサイトでマストドン初心者の方には優しかったですし、PixelFedが開発しているインスタンス検索サイトは現在は閉鎖されていますがMastopeek等外部サービスも充実してますし、そもそもjoinmastodon.org自体にもサーバーメンデーションのページがカテゴリー別に既にあって、マストドン初心者にはわかりやすい入口でしたよね。ということで、あとは何が足りないかとマストドン運営で考えられた結果、おそらく「公式」「iOS」アプリの開発に至ったのだろうと推測します。

マストドンは選択できるAndroidアプリが多い一方、「iOS」アプリのそれが不足しているということで、先行してiOSユーザーへの対応のために今回のアプリ開発の発表と相まったのだと個人的には思います。アプリというのは分散SNSにしても一般的なSNSやWEBサービスでも、新規ユーザーがサービスを選択する際の大きな評価ポイントであり、逆に「アプリがあるから始めた」ということも多いですよね。また「公式」というお墨付きがつくことで一般的には新規マストドンユーザーにとっては安心して利用できるでしょうし、マストドンは分散SNSの中でも最もサーバーやユーザー数が多いことから、事実上のfediへの安定した新しい入り口ができるわけです。ちなみに私が知っている限りでは、他の分散SNSで「公式」「iOS」アプリがあるのはWriteFreelyしか思いつきません。ところがWriteFreelyのアプリはオープンソースであるもののbeta版ですし、有料です。一度購入すれば再課金は無いと言いますが、お値段としては14.99$です。

一連の騒動で海外fediが大荒れな中、私自身かなりストレスフルな海外fediへの情報収集活動の一ヶ月でしたが(以前風刺画を引用トゥートしたような覚えがあるのですが海外fediはああいった状況でしたね)、こういった背景があったからこそマストドンの公式iOSアプリのリリースがあったのだろうと。そして、それはいたって自然な事だなぁと私は思ったりしました。

しかしまぁ、「例のあの人」が最近SNS活動での長い沈黙を破ってGabに場を移して活動を再開しましたし、ParlerやGabでも散発的に様々な動きが発生しています。はてさて、どうなることやら...という感じでございます。胃が痛くならない程度に、普段通り海外fediの情報収集をしたいですね、はい(白目)。


以上

一緒に読むとより内容が分かるであろう私のブログ記事:
・<分散SNSにまつわる開発者・サーバー管理者向け>最近のParlerやGabなどの状況とそれらへの海外fediverseの反応や動向まとめ https://4ioskd.bearblog.dev/parler-gab-fediverse/
・<分散SNSにまつわる開発者・サーバー管理者向け>あの人がfediverseにくるかどうかの件について、海外fediでの意見や対策のまとめ https://4ioskd.bearblog.dev/that-person-maybe-go-to-fedi/



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